Ⅶ 農地の移動と転用の制限

-農地転用許可制度

1.制度の目的
農地法に基づく農地転用許可制度は、食料供給の基盤である優良農地の確保という要請と住宅地や工場用地等非農業的土地利用という要請との調整を図り、かつ計画的な土地利用を確保するという観点から、農地を立地条件等により区分し、開発要請を農業上の利用に支障の少ない農地に誘導するとともに、具体的な土地利用計画を伴わない資産保有目的又は投機目的での農地取得は認めないこととしている。

 

2.制度の概要
農地を転用(農地以外のものにすることをいいます。)する場合又は農地を転用するため権利の移転等を行う場合には、原則として都道府県知事又は指定市町村(注)の長の許可が必要です。
指定市町村とは、農地転用許可制度を適正に運用し、優良農地を確保する目標を立てるなどの要件を満たしているものとして、農林水産大臣が指定する市町村のことをいいます。指定市町村は、農地転用許可制度において、都道府県と同様の権限を有することになります。


なお、国、都道府県又は指定市町村が転用する場合には許可は不要とされていますが、学校、社会福祉施設、病院、庁舎又は宿舎のために転用する場合には、許可権者と協議を行う必要があり、協議が整った場合には許可を受けたものとみなされます。また、市街化区域内農地の転用については、農業委員会への届出制となっています。

 

農地法

許可が必要な場合 許可申請者 許可権者 許可不要の場合
第4条 農地を転用すること

 第4条農地の権利を有する者

(例:所有者)

・都道府県知事
・指定市町村の長

 ・国、都道府県又は指定市町村が転用する場合

(学校、社会福祉施設、病院、庁舎又は宿舎を除く。)
・市町村が土地収用法対象事業のために転用する場合

(学校、社会福祉施設、病院又は庁舎のために転用する場合を除く。)等

第5条

農地を転用するために権利を設定し又は移転すること

以下の者が連名で申請
(1) 農地の権利を取得する者

(転用事業者)
(2) (1)のために権利を設定又は移転しようとする者
(例:農地の売主と買主)

 

(注)許可権者が、4ヘクタールを超える農地の転用を許可しようとする場合には、あらかじめ農林水産大臣(地方農政局長)に協議することとされています。

3.許可基準
許可権者は、許可申請者からの申請があった場合には、次の(1)立地基準、(2)一般基準に基づき、許可、不許可の判断を行うこととされています。
(1)農地区分及び許可方針(立地基準)
農地をその優良性や周辺の土地利用状況等によって次のとおり区分し、転用を農業上の利用に支障が少ない農地へ誘導することとしています。

区分 営農条件、市街地化の状況 許可の方針
 農用地区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地  原則不許可(市町村が定める農用地利用計画において指定された用途
(農業用施設)等のために転用する場合、例外許可)
甲種農地 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法の認定を受け、告示を行った事業等のために転
用する場合、例外許可)
第1種農地 10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法対象事業等のために転用する場合、例外許可)
第2種農地 鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合等に許可
第3種農地 鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可

(2)一般基準(立地基準以外の基準)
許可申請の内容について、申請目的実現の確実性(土地の造成だけを行う転用は、市町村が行うもの等を除き不許可)、被害防除措置等について審査し、適当と認められない場合は、許可できないこととなっている。

4.農地転用許可の手続き

※農業委員会は、必要があると認めるときには、都道府県農業委員会ネットワーク機構へ意見を聴くことができます。

 

Ⅶ 農地の移動と転用の制限

Ⅶ 農地の移動と転用の制限

目次
Ⅷ 河川法

Ⅷ 河川法