Ⅱ 不動産に関する権利

-債権

■賃借権
当事者の一方が、相手方より「賃貸借契約」に基づき、あるものを借りて使用・収益す
る借主の権利のこと。
借主はその対価として貸主に賃料を支払う。民法上は「債権」とされており権利として
の力が弱い。ただし不動産賃借権については借地借家法、農地法により保護を強化
されており、「物権」に近い。


■借地権
建物の所有を目的とする地上権または土地の賃貸借のこと(借地借家法(以下「同
法」という)第2条1号)
実際は地上権の例は少なく、ほとんどが賃借権である。借地権者は地主に対し地代
支払い等の義務を負う。同法では、その存続期間、契約の更新、譲渡や転貸の場合
の地主の承諾に代わる裁判所の許可、借地権者の建物買取請求権などが定められ
ている。また、これは一つの財産権として評価されるものであり、借地権設定の際そ
の評価額分の権利金が授受される場合がある、第三者への対抗力は、地上建物が
登記されておれば、土地賃借権または地上権の登記がされていなくても認められて
いる。


■定期借地権
借地権のうち、契約の更新がなく、定められた契約期間で確定的に借地関係が終了
するもののこと。
借地借家法(平成4年8月施行)により新たに創設された。従前の借地法では、存続
期間が満了しても借地権が消滅せず、契約更新の拒絶には「正当事由」が必要とさ
れており、このことが借地権の供給を妨げる大きな原因となっていた。そのため、借
地借家法(以下「同法」という)では、「定期借地権」(同法第22条)「建物譲渡特約付
借地権」(同法第24条)「事業用借地権」(同法第23条)の3つの「定期借地権」を創設
し、一定の条件下で更新のない借地権を認められることとなった。これらは従前の借
地権に比べ地主にとって活用しやすいものであり、借地の供給活性化に繋がっている。 

 

<借地権・定期借地権の種類>

根拠法

種類 期間 特徴

 借地法

(旧法)

借地権

存続期間に

定めがある場合

堅固な

建物

30年以上

平成4年7月31日まで設定された

従前からの借地権。

利用目的は特に限定されない。

契約は原則更新される。

非堅固な

建物

20年以上

存続期間に

定めがない場合

 

堅固な

建物

60年

非堅固な

建物

30年
借地借家法

普通

借地権

存続期間に

定めある場合

堅固・非堅固

の区別なく

一律30年以上

平成4年8月1日以降に設定された借地権のうち、
下記定期借地権以外のもの。
契約方法に制約はなく、利用目的は特に限定されない。
契約は原則更新される。
建物の買取請求権あり。

 

存続期間に

定めない場合

堅固・非堅固の

区別なく

一律30年

定期

借地権

定期借地権

50年以上

書面(公正証書が望ましい)で

契約更新排除特約を規定。

借地契約満了時に当該借地上の建物を取壊し、更地にして土地所有者に明け渡す。
借地契約の更新、存続期間の延長、建物の買取り請求は不可。
利用目的は特に限定されない。

建物譲渡特約付

借地権

30年以上

借地権設定後30年以上経過した日に借地上の建物を土地所有者に譲渡することを特約し、その譲渡により終了する。
利用目的は特に限定されない。
事業用借地権

10年以上

50年未満

必ず公正証書により契約を結ぶ。
借地契約満了時に当該借地上の建物を取壊し更地にして明渡す。
借地契約の更新、存続期間の延長、建物の買取り請求は不可。
利用目的は事業用建物に限定され住宅は不可。

■使用貸借
目的物(動産または不動産)を無償で借りて使用、収益し、後にその目的物を返還す
ることを約束した契約のこと(民法第593条)。
借主が貸主から目的物を受け取ることによって成立する。借主は、契約に返還時期
が定められている場合はその時期に、定められていない場合は契約に定めた目的に
従い使用収益を終えた時などに、貸主に目的物を原状に復し返還しなければならな
い。この契約は、賃貸借と違い借主が使用収益の対価を支払わない無償のものであ
り、特殊な人的関係のある者同士(親族間や雇用関係など)で契約されることが多い。
なお、その目的物が住宅の場合であっても借地借家法(または旧借地法、旧借家法)
などによる借主保護の適用対象外となる。

 

■借家権
建物の賃借権のうち「借地借家法」(または旧「借家法」)の適用を受けるもののこと。
「使用貸借」や「一時使用の賃貸借」の場合は借地借家法の適用外であり「借家権」
とはならない。建物の引渡しを受ければ第三者に対抗することができる。なお、借家
期間を1年未満と定めた場合には期間を定めなかったものとみなされる。
ちなみに、建物の一部の賃借であっても、マンションの1室のようにその部分について
独占的、排他的支配が認められる場合は借家権が成立することが多いが、間借りの
ように独占的、排他的支配が認められない場合、借家権は成立しにくい。

 

■定期借家権(定期建物賃貸借)
借家権のうち、当初定めた契約期間が満了すると確定的に契約が終了するもののこ
と(借地借家法(以下「同法」という)第38条)。
平成12年3月借地借家法の一部改正により導入された。建物の賃貸借契約は期間
が満了しても「正当な事由」がない限り借家人に明け渡しを求められず、契約更新が
ないとする特約も無効とされていた(同法第28条、30条)。しかしこの「定期借家権」で
は公正証書等の書面により契約し契約を更新しない旨を定めることにより、「正当な
事由」の有無にかかわらず事前通知により、契約更新せず明け渡しを受けることが
可能となった。仮に当事者の合意により契約を継続するためには再契約を重ねてい
くことが必要になる。また、この規定では契約期間が1年未満のものも認められてい
る。
ただし借家人保護の観点から、契約更新がない契約である旨の書面による事前説
明の義務付けや期間満了の1年~6ヵ月前事前通知などの規定が設けられている。
なお、平成12年3月以前に締結された居住用建物の借家契約について、この借家人
が引き続き賃借する場合は「定期借家」契約に変更することはできない。

 

 

Ⅱ物権

物権

目次
Ⅲ都市計画

Ⅲ 都市計画