最近、若い買主の方から「所有権移転登記は自分で申請したい。売主さんに承諾をとってもらえませか?」という依頼が2回続けてありました。
普通であれば、司法書士にお願いするのですが、費用を抑えたいというのもあるようです。また、勉強熱心なお客様も多く、今後の為に、人任せでなく自分で登記をしたいという方が増えているようです。
但し、登記申請は、表題部であれば「土地家屋調査士」、権利部(※)であれば「司法書士」という士業がいるくらい専門的なものですので、自信のない方はやはりそのような専門家に依頼した方が無難でしょう。
※所有権移転登記は権利部の変更登記です
1.所有権移転登記はなぜするの?
不動産を売買する際に、買主は所有権移転登記をしなければ、買主が所有者であることを第三者に主張することができません。
なお、売買による所有権移転登記は、買主が登記権利者、売主が登記義務者として共同で申請するのが原則です。
また、所有権移転登記申請をしない限り、登記事項証明書の所有者の名義は変わりませんし、新たな登記識別情報も発行させません。
但し、下記のような場合は、司法書士に依頼しましょう!
- 売主が承諾しない場合
- 住所変更登記や抵当権抹消登記などをあわせて行う必要がある場合
- 金融機関からの借入がある場合
- 農地の場合
2.所有権移転登記の流れ
それでは、いつまでに何を用意するのかということですが、下記の「引き渡し(決済)」までに、必要書類を準備しておくべきです。
売買契約から完了の流れ
必要書類
作 成 書 類 |
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取 得 書 類 |
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3.注意すべき点
例えば、「日本太郎」さんが売主の場合ですが、登記事項証明書の甲区欄が下記の場合だとします。
下記の事項は必ずチェックしてください。
そもそも、「登記済証」又は「登記識別情報」を紛失している。また、売主名義になっていない、売主の住所が前の住所のまま等の場合は、司法書士に依頼した方が良いでしょう。
4.登記申請書等の記載のしかた
それでは、すべて前述の条件が揃っていたとしましょう。その場合、下記のように書類を作成し申請することになります。
Ⅰ.土地のみの売買の場合
例)売主:日本太郎
買主:平成次郎
売買契約日:令和元年6月1日
引き渡し日(決済日):令和元年7月30日
固定資産評価額(土地):5,815,729円 ※課税標準額と間違えないでください
不動産の表示は下記(登記事項証明書の表題部)のとおり
(登記事項証明書の表題部)
①登記申請書
②収入印紙貼付台紙
③登記原因証明情報
※この「登記原因証明情報」を作成することにより、「売買契約書」を登記申請に添付する必要はなくなります。
④委任状
⑤登記申請
上記①「登記申請書」、②「印紙貼付台紙(※)」、③「登記原因証明情報」、④「委任状」を作成し、買主の住民票(マイナンバー未記入のもの)、売主の印鑑登録証明書、最新年度の「固定資産評価証明書」、登記済証又は登記識別情報(受付番号:第9493号)を添付し、法務局へ申請すればOKです。
綴じ込みの順番やホッチキス止め箇所は、当日、申請窓口で教えてもらえますので、その通りに申請していただければ問題ありません。
※印紙貼付台帳に貼り付けた印紙は、消印はしないでください
登記申請は、不動産所在地の管轄の法務局への申請となります。
⑥所有権移転登記完了
所有権移転登記を申請する際に、登記が完了する日を法務局の受付の方が教えてくれます。その完了日に登記事項証明書を取得してみてください。「日本太郎」さんから「平成次郎」さんへの所有権が完了しているはずです。
Ⅱ.土地と家屋の売買の場合
例)売主:日本太郎
買主:平成次郎
売買契約日:令和元年6月1日
引き渡し日(決済日):令和元年7月30日
固定資産評価額(土地):10,694,754円
固定資産評価額(家屋): 1,836,479円
不動産の表示は省略します。実際の土地と家屋の登記事項証明書の表題部をご覧ください
①登記申請書
②収入印紙貼付台紙
③登記原因証明情報
④委任状
あくまでも親戚や親しい知人同士での売買では、買主による登記申請も良いのですが、失敗できない登記の場合は司法書士にお願いしてください。修正、訂正、やり直し等発生した場合に、売主がまた協力してくれるとは限りませんし、引っ越しして音信不通になりかねないこともあります。
なお、法務局では登記官による登記相談(事前予約制)を行っておりますので、事前に書類を作成しておき確認してもらうことをお勧めします。
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