平成28年12月22日、「平成29年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。
安倍内閣の「働きかた改革」の推進に向け個人所得課税改革の第一弾として配偶者控除の年収要件を引き上げました。
また、企業による「攻めの投資」を後押しするため、税制として賃金の引き上げを促すための取組みを進め、またアベノミクスの効果を波及させるために地域中小企業向けの設備投資促進税制を創設する等の地方創生を推進するための措置を講じています。
今回は、「平成29年度税制改正大綱」のうち、「個人所得課税」「資産課税」「法人課税」「消費課税」「国際課税」といった個人や中小企業に対して影響を与えるものについてピックアップして、4日間にわたり掲載します。
- 個人所得課税 -
配偶者控除および配偶者特別控除の見直し
所得税について、所得控除額38万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限が85万円(給与所得のみの場合、給与収入150万円)に引き下げれれるとともに、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額は38万円超123万円以下(現行:38万円超76万円未満)となります。
一方、合計所得金額が1,000万円(給与収入1,220万円)を超える居住者については、配偶者控除の適用ができないこととなりました。これらは個人住民税についても同様の方法で見直されます。
■所得税は平成30年以後から、個人住民税は平成31年度分以降から適用
積立NISA(非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得および譲渡所得等の非課税措置)の創設
非課税累積投資契約に係る非課税措置が創設され、現行の非課税上場株式等管理契約に係る非課税措置と選択して適用できるようになります。
- 累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後20年を経過する日までの間に支払いを受けるべき累積投資勘定に係る株式投資信託の配当等については、所得税および個人住民税が課されません。上記同様、20年を経過する日までの間に公募等株式投資信託の受益権を譲渡した場合、譲渡所得等については所得税および個人住民税が課されません。
- 対象となるのは定期かつ継続的な方法による買付が契約で定められ、累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の12月31日までの間に取得した公募等株式投資信託の取得対価の合計額が40万円を超えないものに限ります。
非課税口座に設けられた非課税管理勘定に、他の年分の非課税管理勘定または未成年者口座に設けられた非課税管理勘定から移管される上場株式等については、その移管により非課税管理勘定に受け入れる上場株式等の上限額が撤廃されます。
■平成30年1月1日から適用
特定口座年間取引報告書の電磁的記録による提出
上場株式等に係る配当所得等または譲渡所得等の金額を申告する際に確定申告書等に添付する特定口座年間取引報告書の範囲に、金融商品取引業者等から電磁的方法により交付された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面が加わります。
■平成31年分以後の所得税および平成32年度分以後の個人住民税について適用
住宅の耐久性向上改修工事に係る特例措置
●特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除等に係る特例
本特例の適用対象となる工事に特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の耐久性向上改修工事が加えられ、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の耐久性向上改修工事の費用に相当する住宅借入金等が加わりました※。こうした改修工事を含む増改築等に充てるために住宅資金を借り入れた場合、借入金等の年末残高(1000万円を限度)に応じ所得税の額から控除されます。控除期間は5年です。
※控除額は、一定の耐久性向上改修工事に係る工事費用(250万円を限度)に相当する住宅借入金等の
年末残高2%+それ以外の住宅借入金等の年末残高1%
●既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除
本特例の適用対象となる工事に一定の耐久性向上改修工事で耐震改修工事または省エネ改修工事と併せて行うものを加えるとともに、この場合の最大控除額(25万円または50万円)の枠内で、耐久性向上改修工事などに係る標準的な工事費用相当額の特別控除が可能となりました。なお、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合には、最大控除額が10万円ずつ上乗せされます。
注)「一定の耐久性向上改修工事」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、
⑥基礎もしくは⑦地盤に関する劣化対策工事または⑧給排水管もしくは給湯官に関する維持管理もしくは
更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることのほか、
その工事費用(補助金等の交付がある場合には、当該補助金等の額を控除した後の金額)の合計額が50
万円を超えるものをいいます。
■平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に自己の居住の用に供する場合について適用
災害時における住宅ローン控除の特例
住宅借入金があって所得税額の特別控除の適用を受ける住宅(従前住宅)が災害により居住できなくなった場合、その年に限り本税額控除を適用できるという措置に代えて、その年以後の従前住宅に係る適用年で一定の場合について本税額控除の適用が可能となります。
■平成29年分以後の所得税について適用
医療費控除の際の添付書類の変更
医療費控除または特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)の適用を受けるには、現行の医療費の領収書または医薬品購入費の領収書の添付または提示に代えて、医療費の明細書または医薬品購入費の明細書を確定申告書の提出の際に添付することが必要です。そして医療費の領収書または医薬品購入費の領収書についても、確定申告期限等から5年間、税務署長の求めがあったときはこれらを提示または提出しなければなりません。
■平成29年分以後の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合に適用。
ただし、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、現行方法でも可能