最近、車で走っていて良く目にするのが太陽光発電所です。経済産業省も2030年の望ましい電源構成(ベストミックス)に、再生可能エネルギーは最大24%の比率を掲げており(ちなみに原子力は20%~22%) 、特に産業用の太陽光は、当初2期の買取り価格が高かった(40円/kWh、36円/kWh)ためと、買取期間が20年間と長期のために一気に普及しました。
ところで、借地の場合の地主と事業者との借地契約はどのようになっているのでしょうか。大規模な施設だと、投資額が数十億円以上にもなり、投資家を募りSPC(特別目的会社)方式[下図]がとられることが多いようです。その場合の借地契約を見てみます。
※IPP事業者:独立系発電事業者
(Independent Power Producer)
※EPC業者:設計・調達・建設業者
(Engineering Procurement Construction)
※O&M業者:運転管理・保守点検御者
(Operation&Maintenance)
IPP事業者としては、投資家からお金を預かって投資を行うため、20年間発電所を保有し安定した収入を得て配当し続けるか、数年保有したのち売却し売却益を得て、投資家に投資額よりも高いリターンを還元する必要があります。また、金融機関から、事業による収益のみを返済原資とする融資形態(ノンリコースローン)をとる必要もあります。その場合、土地を借りる権利として、賃借権や地上権を設定することになります。
太陽光発電施設は、建築基準法上の建物や工作物でない(電気事業法上の工作物)ため、借地借家法の対象外となります。当然に法定地上権もありません。よって、民法604条により20年を超えない範囲で賃借権を設定します。
例)
上記の登記事項証明書では、存続期間が20年となっておりますが、実務では設置工事期間と撤去工事期間を考慮すれば、買取期間の20年では借地期間が不足しますので、予め20年間の借地契約と同時に、不足する期間の借地契約も締結しておきます。
(参考:契約書書式)
賃借権の場合、20年というしばりがあるので、買取期間と設置工事期間と撤去工事期間を加味して、1回の契約で済ます地上権設定契約を用いる場合もあります。
例)
(参考:契約書書式)
SPC方式による賃借権設定も地上権設定も、一見地主さんからすれば、IPP事業者の都合の良い権利のように見えますが、実は地主さんにもメリットのある権利です。例えば、通常、借主が倒産した場合は、通常の借地契約であれば賃料収入はストップしてしまいます。しかし、SPC方式であれば、投資家が倒産したとしても、SPCは倒産隔離されているので、SPCにはその投資家の倒産による波及はありません。つまり、その事業からの収益が上がっている限りは安定した収入を得られるというわけです。
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